秀吉の愛したゴールドは、華やかで光り輝くゴールドはメインとなる光の発信源のような存在。対する利休の黒は光を吸収し包み込み受け入れて放さない、尊厳の高い色です。ゴールドはそれだけで主役になる色。利休の愛した黒い茶碗は金の茶室にあって周りを引き締める厳格さと中に入れる抹茶のグリーンの美しさを際立たせる色でした。
利休が黒を選んだのは、それまでの慣習の文脈に囚われないものの見方、単なるわびさびから解放された価値観で黒という色と向き合っていたと思います。チタンの黒の結婚指輪も、それまでの結婚指輪に黒というのは型破りなところがありました。しかしそれこそが黒を選ぶ人の意識の表れで、光るゴールドよりも、尊厳とともに、周りを引き立てる黒という美しさがわかっている人が黒を身に着けています。黒い服は喪服ではなく、人気のある服装に黒があたりまえのように選ばれているように、結婚指輪にも黒が自然に取り入れられています。
資料*服飾専門家による白い喪服と勘違いによる黒への変化: 日本の喪服はもともと白で、それが黒、白、黒と変っていった
ちなみに黒は縁起の悪い色ではありません。喪服が黒となったのは明治以降で、それまでは白が喪服の色でした。唐でいう「錫」とは、灰汁処理した目の細かい麻布のことで、それは白い布のことなのですが、どういうわけか日本人はこれを金属のスズと解釈し、スズ色、つまり薄墨に染めてしまったというミスも生じ、時代を経て白、黒、そしてまた白、黒へ変遷していった経緯があるそうです。
色彩のイメージと世界各国の違い「優雅さを表す色は」という質問には、世界的には黒、白の回答が多い
チタンの化学変化による色の不思議をアクセサリー加工に活かす実例。
着色でないメタル本来のカラーを研究し、彫金に取り入れます。いわゆる銀色と広く呼ばれる金属全般には、実は色々な発色があり、
反射によりさまざまな色彩を放ちます。
参照:黒い指輪たちブラックチタンで作られたリング
/(外部サイト)黒ブームとトレンド
「上品」「高級」「スタイリッシュ」というのが黒のイメージ。プレミアムと名のつく商品や、ブランドは黒バックにロゴの背景に黒を配しています。シャネルのように。
黒い結婚指輪も黒いウェディングドレスも着られるようになりました。黒がブームでなく定着してきた背景には黒い食品への注目も寄与しているのではないでしょうか。黒ごま、黒豆、黒砂糖、黒酢に端を発し、黒い面棒も登場しました。黒いまな板も。今では黒いマスクを渋谷の街でも学校でもよく見かけます。黒い服ばかり着るひともいるのに、ウェディングドレスだけ白という世界にも黒が着られるようになり、ご法度かもしれかなった常識がくつがえされ、ベビー服にも黒が登場しています。黒が好きなのだから黒で何がいけないの?と、時代の流れで人々の黒に対する意識は変わっていきます。
指輪の表面に2色以上のカラーを発色させたい場合、一色だけの時に見える色味と異なった色味に見える、目の錯覚が起きます。
例えば単色であったなら、いわゆる緑に見える色を、
その隣に黄色を配置したとすると、パッと見た時にはみどりは黄緑の印象を受けます。
逆に、隣に配置された色が青だったら、みどりは青緑の印象を受けます。
また、単体で見れば黒く見えるのに、隣に黄色がくることで、青くも紫にも見える玉虫色という認識になります。
それだけ見ていると黒だと思ったもので、隣にさらに黒い指輪を並べると黒く見えないこともあります。
チタン、ジルコニウムの青と光沢のない黒を比較した場合も、青の彩度が高すぎると黒がグレーにしか見えないといった状況が生まれます。
同じ色に対しても目に錯視がはたらくことを知っておくと、イメージ違いが起こったときのなぞが解けると思います。